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【特別講義 第12回】 腸上皮培養の今後と応用

細胞培養特別講義 第12回講師は、前回に引き続きご講義いただいております東京医科歯科大学の中村哲也先生です。今回は「腸上皮培養の今後と応用」というテーマでご寄稿いただきました。中村先生のグループの研究にも触れて、腸上皮研究が今後どのように展開していくのか、先端工学とのコラボレーションやヒトの腸疾患治療に対する再生医療への取り組みも含めてご紹介いただきました。是非お楽しみ下さい。 

 

講師紹介ページ東京医科歯科大学 中村哲也 先生

“腸上皮培養の今後と応用”

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 

消化管先端治療学講座 教授

 中村 哲也 先生

  腸上皮オルガノイド培養技術の出現は、腸上皮研究に大きなインパクトを与えました。特に、腸上皮細胞を単に増やすだけでなく、生体内上皮の構造や機能を保持して培養できるオルガノイド技術は、腸上皮機能解析、発生研究、上皮/非上皮細胞間相互作用解析など、生体内を模倣した形での腸上皮研究を可能にすると期待されています。

 

 しかしながら、より微細な構造・機能を考慮した場合、例えば培養小腸オルガノイドには成熟絨毛構造がみられないなど、オルガノイドが完全に生体内腸上皮のコピー構造ではないことも事実です。これを受けて、材料工学や造形技術などの先端工学手法を培養技術と組合せ、より高度で複雑な生物学的プロダクトを体外で構築するバイオファブリケーションの考えを腸組織に応用する試みも出てきました。

 

 例えば微小構造構築技術を駆使して、小腸絨毛構造や腸管の管構造を精緻に模した細胞外基質をデザインし、これに腸上皮細胞を配置して培養する試みも始まっています。著しい進歩を遂げる3Dバイオプリンター技術や組織の脱細胞化/再細胞化技術も組合せ、より高い精度で腸組織構造を模倣する体外培養技術が今後益々進歩することが期待されます。

 

 3次元細胞培養の支持体(細胞外基質)の構造のみならず、その「質」の研究も進んでいます。Sato法での腸上皮オルガノイド培養が、当初マトリゲルを支持体としたことは前回述べた通りです。しかしながらわれわれを含む複数のグループにより、I型コラーゲンを基質としても腸上皮オルガノイド培養が可能であることも示されました。

 

 興味深いことに最近の研究で、I型コラーゲンとマトリゲル内で培養した腸上皮オルガノイドが機能的に異なることも指摘されています。また、まったくの人工素材(ハイドロゲル)を支持体とし、完全に既知の因子を加えるのみの環境でも腸上皮オルガノイド培養ができることも明らかになるなど、細胞外基質の質が培養腸上皮におよぼす作用の解析もますます進んでいます。

 

 今後のさらなる研究により、細胞外基質の形状や質を時間・空間的に操作し、複数の細胞種を適時適所に配置し培養することにより、生体腸組織がもつ構造・機能上の特性を体外で忠実に模倣することが可能になると考えられます。そしてこれら体外腸様培養組織は、薬物スクリーニングや消化吸収試験など腸機能を体外で解析するツールとして、さらにはヒト腸疾患のモデルとして利用できるプラットフォーム技術となるものと期待されています。

 

 最後に、体外培養した腸上皮をヒト腸疾患治療に利用する考えについても述べたいと思います。さまざまな理由で小腸の大半を切除することを余儀なくされ生じる短腸症候群、特定の遺伝子異常で特定の栄養吸収異常を呈する遺伝性疾患群、あるいは持続する炎症とともに腸上皮バリア機能破綻を示す炎症性腸疾患など、物理的・機能的な腸上皮の障害や欠損が関わるヒト腸疾患は少なくありません。

 

 腸上皮オルガノイド培養技術の出現は、正常な腸上皮幹細胞を培養して増やし、これら疾患における腸上皮欠損の補充に利用できる可能性を提示しました。

 

 しかしながら、果たして腸上皮オルガノイドに組織構築能をもつ真の上皮幹細胞が含まれているかは未解決でした。私のグループでは、培養オルガノイド細胞を腸組織へ移植するマウス実験に挑みました。すなわち大腸炎マウスをレシピエントとし、これにまずは培養大腸オルガノイド細胞を移植する実験系を構築し、腸管上皮細胞移植に初めて成功しました。

 

 その結果、移植オルガノイド細胞が欠損上皮を補充しながら上皮組織を構築すること、1個の幹細胞から増やした細胞群の移植で広汎な組織再生が得られること、かつ移植細胞が長期にわたり組織幹細胞として機能することを明らかにしました(Yui Nat Med 2012)。

 

 われわれはマウスを用いる移植実験をさらに発展させ、培養した胎児小腸上皮や(Fordham RP Cell Stem Cell 2014)、成体由来の培養小腸上皮を大腸へ異所移植する実験にも成功しました(Fukuda M Genes Dev 2014)。これら研究では興味深いことに、胎児小腸細胞の移植と成体小腸上皮の移植とでは移植片の性質が異なることも明らかにできました。

 

 このような腸上皮移植実験の成果は、微小な組織に含まれる腸上皮幹細胞を体外培養で増やし、これをさまざまタイプの腸管上皮の修復・再生に利用可能であることを示すものです。これら移植研究の成果を受け、体外培養で上皮/非上皮組織を含む成熟腸様組織を構築してマウスへ移植する研究など、培養腸オルガノイドを治療に用いる基礎研究も広がりを見せています。

 

 このように、ここ数年で進歩した腸上皮細胞培養技術は、培養細胞を体外で利用する目的にとどまらず、個体へ戻して臓器機能再生を図るための細胞を大量作製する技術としても注目を集めています。

 

 



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