極東製薬工業株式会社

  • ホーム
  • 細胞培養受託製造
  • 細胞培養製品一覧
  • 技術情報
  • ペプトン・エキス製品一覧
  • KYOKUTOブログ
  • お問い合わせ

KYOKUTOブログ

極東製薬工業(株)公式ブログです。
当社と関わりのある先生方からの投稿記事や、当社の細胞培養オタク研究員のつぶやきを紹介致します。

細胞培養 特別講義

研究開発情報

製品情報

 · 

【特別講義 第20回】ありふれた「先輩との出会い」

 講師は前回(細胞培養 特別講義 第19回)に引き続き、物質・材料研究機構 の谷口彰良先生です。前回は、研究の道に踏み出し、研究の基礎を学ぶことになった「恩師との出会い」のエピソードをご紹介いただきました。

 

 今回は、より身近なロールモデルとなる人物に出会った「先輩との出会い」についてご執筆いただきました谷口先生は、“ありふれた” と表現されていますが、それぞれとの出会いは非常に貴重なもので、その時に感じたことを実践しようとされているところに、谷口先生のお人柄がにじみ出ているようです。

 

どうぞ最後まで楽しんでご覧くださいませ。

 

■ 講師紹介ページ:物質・材料研究機構 谷口 彰良 先生

  

 

" ありふれた「先輩との出会い」 "

 

物質・材料研究機構 グループリーダー

早稲田大学理工学術院 教授

谷口 彰良 先生

 

 

 

  「何ですか?この怒鳴り声は!」教授室の前でばったり会った4年生の後輩が驚いて私に聞きました。「今、助手の先生と教授が私の論文について話し合っているところなんだ」。「これが話し合い??」「先輩の論文、大丈夫なんですか?」「え!」私はすごく不安な気持ちになりました。

 

 3年の冬から始めたイムノアッセイの研究は順調に進み、修士1年の夏にはある程度の成果を上げたので、私は喜んでいました。そんな時、助手の先生が「谷口くん、論文を書いて見ないか?英語で」。「え!英語で?」。それは無理だろうとその時思いました。修士の1年生が英語で論文、無理でしょ。私はそう思いました。しかし、先生は「君は科学者になりたいんだろ?論文を英語で書けないと科学者にはなれないよ。論文を書かない科学者は絵を描かない画家みたいなもんだからね」。なるほど・・。何か妙に説得力があったので、英語で論文を書いてみることにしました。

 

 

 しかし、書きはじめてみるとこれがすごく難しいのです。当たり前です。修士1年の学生がスラスラ論文を書けるわけがありません。それでもやっと「実験と材料」のところだけでも少し書けたので、先生に見てもらいました。助手の先生は丁寧に1文1文添削して、何が間違っているかを教えてくれました。そして先生は「論文を書く難しさは英語の問題ではないよ。ロジックだよ。ロジックがしっかり頭も中でできていれば中学生レベルの英語でも十分書けるはずだよ。」そう教えてくれました。「論文は小難しく書くのではなく、わかりやすく書くことが重要なんだよ。じゃないと多くの人に読んでもらえないよ!」なるほど、私は論文というものは崇高で小難しいものだと思っていましたが、それは間違いでした。不思議なことに、頭の中でロジックが整理されていると、「序論」や「結果と議論」の項も何とか書けるようになりました。

 

 

 3ヶ月ほどかかって、ようやく論文が完成しました。やったー!という充実感に浸れました。その間は実験を一切せず、論文書きに集中しました。助手の先生も毎日付き合ってくれて、それはそれは丁寧に指導してくれました。私にとってはこの時の先生の指導はその後の研究生活において大切なものになりました。論文作成や学生への指導は今でもこの時の先生の指導を参考にさせてもらっています。この助手の先生は学位を取得したばかりで、27歳でした。23歳だった私にとっては先生というより先輩みたいな感じでした。きっと助手の先生もそう感じていたのではないでしょうか?

 

 

 その後、完成した論文を教授の先生に見てもらうことになりました。論文を渡して数日後、助手の先生が教授に呼び出されたのでした。私も心配だったので、教授室の前で聞き耳を立てていました。そして、しばらくして怒鳴り合いが聞こえてきたのでした。その後、静かな話し合いが10分程度続いた後、助手の先生は意外にも「笑顔」で教授室から出てきました。

 

 

 「何の話し合いだったのですか?」私は恐る恐る聞きました。「内容に問題があったのでしょうか?」私は心配でうつむきながら聞きました。「内容は全く問題がなかったよ」じゃー何でそんな怒鳴り合い??私の顔にそんな「はてなマーク」が見えたのでしょう。助手の先生は静かに説明を始めました。

 

 

 「名前の順番だよ!」「は??」私は何のことかすぐに理解できませんでした。教授の先生は「自分か君を筆頭にして学生は2番目にしなさい」と言ったそうです。助手の先生は「彼は最初から最後まで、自分の力で論文を書いたのだから、彼を筆頭にすべきです!」そう主張してくれたそうです。それでも教授は「君の将来を考えたら君が筆頭になるべきだろ、君もいつまでも助手でいるわけにはいかんだろ!」そう怒鳴ったそうです。しかし助手の先生は「私の将来は私が書いた論文で何とかします。今回は学生の将来を考えてください!」そう怒鳴りかえしたそうです。怒鳴り声の正体はこれだったんです。すると教授はしばらく考え込み「君がそこまで言うならそうしなさい」と静かに言ったそうです。

 

 

 私はこの話を聞いてびっくりしました。この先生は私のためにこれだけしてくれる人なんだ。私のために教授を怒鳴りつけることができる人なんだ!助手が教授に楯突いて怒鳴る!普通じゃありえません。36年前の話なら尚更です。「論文は研究者にとって大事なものです。論文の筆頭著者は名誉です。君はそれだけの努力をしたのだから筆頭著者になるのは当然です。教授もそれが分かったから同意してくれたんです。」私の目から自然と涙がこぼれ落ちました。学生のためなら教授であろうとも正論をぶつける。なんて素晴らしい先輩なんだ!なんてかっこいいんだ!と思いました。それと同時に、この研究の世界は努力が報われ、正論がまかり通る世界なんだ!そんな思いがこみ上げ、私もいつか「絶対に研究者になるんだ」という意志がいっそう強くなりました。

 

 

 今でも、私の初めての論文の別刷りを見ると当時のことを思い出します。私も今は学生を指導する立場です。私もこんなかっこいい先輩みたいになれているのかな〜。なれてたらいいな〜。いや、先輩のように指導しよう!今もそう強く自分に言い聞かせています。そんなありふれた先輩との出会い、みなさんにもあるのではないでしょうか?

 

 

当社Facebookページをフォローしていただきますと、Kyokutoブログ等の情報をいち早く入手できます。こちらもどうぞご覧ください。

 

極東製薬工業(株)産業営業所 Facebook ページ

 

この記事に関するお問合せはこちら

cellculture@kyokutoseiyaku.co.jp

 

 

過去記事

【特別講義 第25回】竹内先生インタビュー連載記事Vol.2

【出展案内】 11/25-27 バイオEXPOに出展します!

【お知らせ】順天堂大学およびJUNTENBIOとの共同研究について

【出展案内】再生医療JAPAN/BioJapanに出展します!

【お知らせ】ペプトン・エキスのご紹介

【特別講義 第24回】竹内先生_インタビュー連載記事Vol.1

【講師紹介】東京大学 竹内 昌治 先生

【お知らせ】受託サービスのご紹介

【特別講義 第23回】iPS細胞から誘導した次世代型膵島の臨床応用を目指して

【出展情報】第19回日本再生医療学会総会に出展しております

【お知らせ】総合パンフレットのご紹介

【特別講義 第22回】iPS細胞から膵島の大量培養法の開発

【出展情報】再生医療EXPO大阪に出展しております

【出展案内】2/26-28再生医療EXPO大阪に出展します!

【お知らせ】東京女子医科大学と共同研究開始

【特別講義 第21回】今なぜiPS細胞から膵島作製が必要なのか?

【講師紹介】国立国際医療研究センター研究所 大河内仁志先生

【出展情報】第42回日本分子生物学会

【特別講義 第20回】ありふれた「先輩との出会い」

【出展報告】再生医療JAPAN

【出展案内】10/9-11再生医療JAPANに出展します!

【特別講義 第19回】ありふれた「恩師との出会い」

【技術情報】Stem-Partner SF/ACF(ラミニン添加法)

【出展情報】バイオ医薬EXPO開幕しました!

【出展情報】バイオ医薬EXPO

【特別講義 第18回】ありふれた「細胞との出会い」

【講師紹介】物質・材料研究機構 谷口彰良先生

【出展情報】輸血・細胞治療学会に出展中です

【掲載情報】PHARMSTAGE (2019.3)に掲載されました

【新製品情報】凍害保護液

【出展情報】日本再生医療学会に出展中です

【出展情報】日本自己血輸血学会に出展します

【出展情報】再生医療産業化展に出展します

【特別講義 第17回】iPS細胞から分化した神経系細胞を用いた再生医療前臨床および疾患モデル研究

【新製品情報】ヒトiPS/ES細胞用培地

【特別講義 第16回】ES/iPS細胞から神経幹細胞を誘導する

【特別講義 第15回】神経幹細胞を培養する

【講師紹介】順天堂大学 赤松和土 先生

【出展報告】再生医療JAPAN 2018

【出展案内】再生医療JAPAN 始まりました

【お知らせ】細胞培養関連サイトのデザインが変わりました

【掲載報告】9/27「化学工業日報」再生医療特集に掲載されました

【出展案内】再生医療JAPANに出展いたします

【掲載報告】9/10「化学工業日報」に掲載されました

【お知らせ】展示会出展のご報告

【お知らせ】特設サイトオープンいたしました

【お知らせ】バイオ医薬EXPOスタート

【お知らせ】日本組織培養学会に参加しました(6/25)

【お知らせ】展示会のご案内(6/21)

【お知らせ】技術情報の更新(4/16)

【特別講義 第14回】常在菌と病原菌の狭間(後編)

【お知らせ】ニュースリリース更新のお知らせ(4/2)

【特別講義 第13回】常在菌と病原菌の狭間(前編)(2/8)

【講師紹介】東京女子医科大学 菊池賢先生(1/23)

【お知らせ】CP-1がMFに登録されました

【特別講義 第12回】腸上皮培養の今後と応用(10/31)

【特別講義 第11回】 腸上皮オルガノイド培養 (09/29)

【特別講義 第10回】 腸上皮組織と幹細胞 (09/08)

【講師紹介】東京医科歯科大学 中村哲也先生(09/08)

【特別講義 第9回】なぜT細胞だけが胸腺で分化するのか (06/26)

3製品の技術情報ページを更新しました! (06/16)

【特別講義8】免疫反応の制御と制御制T細胞 (02/24)

【主席研究員部屋7】 水は培地の生命です (01/18)

このページのTOPへ

細胞培養

  • 受託製造
  • 製品一覧

ペプトン・エキス類

  • 製品一覧

KYOKUTOブログ

  • 細胞培養 特別講義
  • 研究開発情報
  • 製品情報

お問い合わせ

  • お問い合わせ一覧
  • ご利用に当たって
  • 個人情報について