極東製薬工業株式会社

  • ホーム
  • 細胞培養受託製造
  • 細胞培養製品一覧
  • 技術情報
  • ペプトン・エキス製品一覧
  • KYOKUTOブログ
  • お問い合わせ

KYOKUTOブログ

極東製薬工業(株)公式ブログです。
当社と関わりのある先生方からの投稿記事や、当社の細胞培養オタク研究員のつぶやきを紹介致します。

細胞培養 特別講義

研究開発情報

製品情報

 · 

【特別講義 第9回】なぜT細胞だけが胸腺で分化するのか

今回は、第2回, 第8回を担当いただいた順天堂大学の垣生園子先生より「なぜT細胞だけが胸腺で分化するのか?」というテーマでご寄稿いただきました。
免疫細胞の中でもT細胞だけが“胸腺”で成熟する謎の解明には、細胞培養技術の進歩も重要な要素だったようです。非常に興味深いテーマとなっておりますので、ぜひお楽しみください。

■ 講師紹介ページ:順天堂大学 垣生園子 先生

“なぜT細胞だけが胸腺で分化するのか?” 
順天堂大学医学部 アトピー疾患研究センター 客員教授
垣生園子 先生



 免疫反応の司令塔と言われるT細胞は、他の免疫系細胞と違って骨髄では発生・分化せず、骨髄と離れた遠隔地の胸腔内ある胸腺という臓器内で誕生する。<細胞培養 特別講義2>で触れたように、ヌードマウスやディージョージ症候群のよう胸腺が欠如している個体ではT細胞が生体内に存在しない。なぜ、他の免疫細胞と異なった臓器でT細胞は分化するのか?そこで分化することがT細胞機能にどのような影響を及ぼすのか?約50年の長きに渡って謎であった。

 個体発生学的及び解剖学的に、胸腺の微小環境(ニッチ)は骨髄とは異なっていることが1960年代には既に解っていた。ニッチの違いとして多くの研究者が注目したのは、骨髄の骨格を作っているのは間葉系細胞であるのに対し、胸腺のそれは上皮由来の細胞であるという点にあった。一般に上皮系細胞は様々な物質を分泌・産生すると考えられていたので、胸腺上皮細胞もT細胞分化を誘導する因子を発現しているに違いないと想定された。実際、胸腺ホルモンという言葉が、研究論文にもよく見かけられた。

 培養液の改良による細胞培養技術の進歩に伴い、1980年代にはニッチ特異的分子探しへの挑戦が始まった。それにはまず、胸腺から上皮細胞を純粋に採取して培養することが求められた。しかし、遊離している免疫系細胞と違って、リンパ球を除去した胸腺上皮細胞の培養や細胞株の樹立及びその機能解析は困難を極め、胸腺上皮細特異的分子の研究はことごとく失敗に終わった。その主たる原因は、培養液ではなく胸腺上皮細胞特有の胸腺の臓器構成にあった。胸腺上皮細胞は腸管上皮のように基底膜上に整列しているわけではなく、リンパ球を取り囲む網籠のような立体構造を作っている。胸腺上皮細胞は単離・培養する過程でバラバラになり培養皿の底に一層にへばりつく状態となる。その結果、我々が後に発見した胸腺上皮特異的分子が失われてしまっていたのである。

 胸腺臓器培養の開発:胸腺上皮細胞培養に成功しなかった頃、胸腺内でのT細胞分化を追跡するために考案されたのが、胎仔胸腺を用いた臓器培養系である(Fetal thymic organ culture, FTOC)。あるいは単離した上皮細胞と未熟リンパ球を混ぜて軽く遠心して緩やかな立体構造を作り、filter上に乗せて培養する方法(re-aggregation thymic organ culture, RTOC)で、骨髄から移入したばかりの“あすなろ”T細胞が、どのように胸腺構築中で分化するかを、種々の遺伝子やタンパク質の発現を指標にして経時的に解析した。その結果、胸腺内でのTリンパ球自身の分化に関する沢山の情報を得た。興味深いことに、この方法はいずれも英国で開発された。まさに、私が留学していた時のことである。

 胸腺上皮細胞に特異的なT細胞分化に関わる分子の発見は、上皮細胞の培養系の研究からでなく、遺伝子欠損実験を駆使した造血幹細胞の分化におけるNotch分子の役割解析から生まれた。すなわちNotch欠損マウスでは、T細胞のみが分化できなかった。T細胞が分化しないヌードマウスでは、胸腺上皮が適正に分化しないことが原因である。それでは、Notchにシグナルを入れるリガンドが胸腺ニッチに発現しているのではないか?と考えた。そこで、Notch リガンドを欠如するマウスを作成すると、見事にT細胞は欠如していた。

 胸腺ニッチの研究の歴史は、iPS細胞等からin vitroで分化させた細胞から組織構築に挑戦する上でも参考になるかもしれない。最近の培養技術は、in vitroで立体構造を保つ方法の開発が進んでいる。



当社Facebookページをフォローしていただきますと、Kyokutoブログ等の情報をいち早く入手できます。こちらもどうぞご覧ください。

過去記事

【特別講義 第25回】竹内先生インタビュー連載記事Vol.2

【出展案内】 11/25-27 バイオEXPOに出展します!

【お知らせ】順天堂大学およびJUNTENBIOとの共同研究について

【出展案内】再生医療JAPAN/BioJapanに出展します!

【お知らせ】ペプトン・エキスのご紹介

【特別講義 第24回】竹内先生_インタビュー連載記事Vol.1

【講師紹介】東京大学 竹内 昌治 先生

【お知らせ】受託サービスのご紹介

【特別講義 第23回】iPS細胞から誘導した次世代型膵島の臨床応用を目指して

【出展情報】第19回日本再生医療学会総会に出展しております

【お知らせ】総合パンフレットのご紹介

【特別講義 第22回】iPS細胞から膵島の大量培養法の開発

【出展情報】再生医療EXPO大阪に出展しております

【出展案内】2/26-28再生医療EXPO大阪に出展します!

【お知らせ】東京女子医科大学と共同研究開始

【特別講義 第21回】今なぜiPS細胞から膵島作製が必要なのか?

【講師紹介】国立国際医療研究センター研究所 大河内仁志先生

【出展情報】第42回日本分子生物学会

【特別講義 第20回】ありふれた「先輩との出会い」

【出展報告】再生医療JAPAN

【出展案内】10/9-11再生医療JAPANに出展します!

【特別講義 第19回】ありふれた「恩師との出会い」

【技術情報】Stem-Partner SF/ACF(ラミニン添加法)

【出展情報】バイオ医薬EXPO開幕しました!

【出展情報】バイオ医薬EXPO

【特別講義 第18回】ありふれた「細胞との出会い」

【講師紹介】物質・材料研究機構 谷口彰良先生

【出展情報】輸血・細胞治療学会に出展中です

【掲載情報】PHARMSTAGE (2019.3)に掲載されました

【新製品情報】凍害保護液

【出展情報】日本再生医療学会に出展中です

【出展情報】日本自己血輸血学会に出展します

【出展情報】再生医療産業化展に出展します

【特別講義 第17回】iPS細胞から分化した神経系細胞を用いた再生医療前臨床および疾患モデル研究

【新製品情報】ヒトiPS/ES細胞用培地

【特別講義 第16回】ES/iPS細胞から神経幹細胞を誘導する

【特別講義 第15回】神経幹細胞を培養する

【講師紹介】順天堂大学 赤松和土 先生

【出展報告】再生医療JAPAN 2018

【出展案内】再生医療JAPAN 始まりました

【お知らせ】細胞培養関連サイトのデザインが変わりました

【掲載報告】9/27「化学工業日報」再生医療特集に掲載されました

【出展案内】再生医療JAPANに出展いたします

【掲載報告】9/10「化学工業日報」に掲載されました

【お知らせ】展示会出展のご報告

【お知らせ】特設サイトオープンいたしました

【お知らせ】バイオ医薬EXPOスタート

【お知らせ】日本組織培養学会に参加しました(6/25)

【お知らせ】展示会のご案内(6/21)

【お知らせ】技術情報の更新(4/16)

【特別講義 第14回】常在菌と病原菌の狭間(後編)

【お知らせ】ニュースリリース更新のお知らせ(4/2)

【特別講義 第13回】常在菌と病原菌の狭間(前編)(2/8)

【講師紹介】東京女子医科大学 菊池賢先生(1/23)

【お知らせ】CP-1がMFに登録されました

【特別講義 第12回】腸上皮培養の今後と応用(10/31)

【特別講義 第11回】 腸上皮オルガノイド培養 (09/29)

【特別講義 第10回】 腸上皮組織と幹細胞 (09/08)

【講師紹介】東京医科歯科大学 中村哲也先生(09/08)

【特別講義 第9回】なぜT細胞だけが胸腺で分化するのか (06/26)

3製品の技術情報ページを更新しました! (06/16)

【特別講義8】免疫反応の制御と制御制T細胞 (02/24)

【主席研究員部屋7】 水は培地の生命です (01/18)

このページのTOPへ

細胞培養

  • 受託製造
  • 製品一覧

ペプトン・エキス類

  • 製品一覧

KYOKUTOブログ

  • 細胞培養 特別講義
  • 研究開発情報
  • 製品情報

お問い合わせ

  • お問い合わせ一覧
  • ご利用に当たって
  • 個人情報について